「災害時は72時間動くな」は無理?医療職ママが考える、家族の命を守るためのリアルな防災戦略
はじめに:その「帰りたい」気持ち、痛いほど分かります
「地震が起きたら、まずはその場に留まって。72時間は移動しないでください」 防災ガイドブックやニュースで一度は耳にしたことがあるフレーズではないでしょうか。
でも正直、心の中ではこう思いませんか? 「そんなの無理だよ。子供が学校にいるのに、すぐに迎えに行きたいに決まってるじゃない」
私自身、三児の母として、災害時に家族と離れている状況なんて想像するだけで震えます。今日は、行政が推奨する「72時間待機」の理想と、私たち親が抱く「一刻も早く家族に会いたい」という本音の間で、どうバランスを取ればいいのか。医療職の視点を交えて一緒に考えてみましょう。
1. なぜ行政は「72時間動くな」と言うのか?
冷たく聞こえるかもしれませんが、これには明確な理由があります。それは「救える命のタイムリミット」だからです。
- 救急車両を通すため: 道路に人が溢れると、救急車や消防車が現場にたどり着けなくなります。「自分の家族を救うための救急車」が、帰宅者の渋滞で立ち往生する可能性があるのです。
- 群衆雪崩のリスク: 災害直後の街は、ガラスの破片や倒壊の危険で溢れています。慣れない道を大勢で移動するのは、二次災害に巻き込まれるリスクを自ら高めることになります。
医療の現場でも「72時間」は、救命率が大きく左右される重要な期間とされています。行政の呼びかけは、この時間を少しでも無駄にしないための「お願い」なのです。
2. 「帰らない」を選択するための、唯一の条件
分かってはいても、親なら「動くな」と言われて大人しく待てるはずがありません。では、どうすればいいのか?
結論はシンプルです。「もしもの時のルール」を、平時に決めておくこと。
「帰ってきて」とパニック状態で移動し、危険な目に遭うリスクを減らすために、以下の3つを家族で共有しておきませんか?
- 集合場所・安否確認のルールを決める 「帰宅」が一番の目的ではなく、「家族が安全に合流すること」を目的にします。

「学校へ迎えに行く」、「避難所や指定場所で合流する」の役割分担。学校の引き渡しマニュアルを事前に確認しましょう。パパ・ママどちらかが迎えに行き、もう一人はその場にとどまるという選択も考慮して。
- 通信手段の確保 大規模災害時は電話は繋がりません。災害用伝言ダイヤル(171)や、LINE、SNSなど、家族間での「連絡の通り道」を一つに絞っておきます。
- 「待機」の準備を職場・学校に期待しすぎない 職場や学校に3日分の備蓄がない場合、移動せざるを得ません。だからこそ、自分のバッグに「最低限のエネルギーと水、モバイルバッテリー」を入れておくことが、結果的に自分を守り、社会を守ることになります。
3. 「動かない」ことが、最大の愛情表現になる日
「帰りたい」という親心は、どうしようもなく尊いものです。 でも、もしもの時は、「自分と子供が安全な場所で生き延びること」こそが、何よりも家族を救う行動になります。
「72時間待機」は、ただのルールではなく、救助を待つ誰かの命を救うためのバトンです。
皆さんのご家庭では、もしもの時、どこでどうやって落ち合うか決めていますか?まだの方は、ぜひ今日の夕飯時にでも、お子さんと話し合ってみてくださいね。
おわりに
防災は「正解」を押し付けるものではなく、「自分たちがどう生き延びるか」を考える作戦会議です。理想論だけじゃやっていけない。だからこそ、私たち親は「現実的な備え」を積み重ねていきましょう。